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東京⇄淡路島

満たす/満たされる、について。もてなす/もてなされる、が固定されてしまっているから、遠くへ行ってみてはどうかという話になった。目的地を決めて最短距離・最短時間で行くよりも、流動的であること、その移動の過程自体を楽しみたい、ということで、車で淡路島へ行くことになった。7時間。宿と服屋だけ寄るのを決めて、あとは行き当たりばったりで、ということで即合意した。

19日(月・祝)

午前0時

台風14号が迫ってきているというのに、その調子でもっと速度を落としてくれ...!と台風に祈る自分がいるだけで、嵐の中の深夜の大阪行きを止めてくれる者は不在のまま、当日になってしまった。
掃除機をかけるためにそれまでやっていた作業を片付け、珍しく、時間に余裕を持って迎えを待つ。2時間だけ仮眠を取ろうと試みたものの、結局、ただ布団に横になって目を瞑っていただけになってしまった。
ちなみに、3日前ぐらいから楽しみすぎて、車中で聴きたい音楽を5時間分プレイリストに追加したり、途中でお腹が空いたときにといろいろ考えながらスーパーへ買い出しに行ったり、そのうちのプリッツがおいしそうすぎて前々日の深夜に食べてしまったりしていたおかげで、ちょうどテンションがピークアウトした頃だったので、横になって目を瞑れただけマシだったかもしれない。

首都高速

こちらの方へ進んでくるらしい台風に向かうように、西へ西へ。夜道を走るのに合いそうな、かつ眠くならない選曲を流しながら、それぞれの音楽について、どういう経緯でそれを聴くようになったのか、などを話した。どの曲もだいたい誰かから勧められたものだった。影響を受けやすい。

海老名のサービスエリアに立ち寄る。でかい。お腹が空いているような空いていないような気がして、サンドイッチを買った。一つずつ食べる。パンがパサパサしているかと思ったけど、普通においしかった。また高速に乗る。

時々、大雨がザーッとフロントガラスに降り注いで、距離も輪郭もかき消され、前方にぼんやりとライトが見えるだけになったりして、その度に全身の筋肉が緊張する。助手席にただ座っているだけなのだけれど。パーキングの看板が出現すると欠かさず、寄るかどうか尋ねられる。だいたい3回に1回くらいの頻度で休憩をとった。
浜松駅は、建物が鍵盤だった。

7時 ぼくらの広場

どこから眠ってしまったのか、気がついたら朝になって高速を降りていて、数時間分のプレイリストも終わって、なぜか山の方へ、住宅街の中の急な坂道をいくつも上っていく。少し広めのスペースに停車し、車を降りてさらに上へ向かって歩く。雨は降っていない。車でしか行けないところに来ようと思って、と案内された視界の先には、ミニチュアをぎちぎちに詰め込んだような大阪の街並みが広がっていた。右手が京都、左手が和歌山、この山を挟んでちょうど裏に奈良があるらしい。寝起きで足元も視界もふわふわしている。こんな静かな山の上から、大阪を見下ろすことができるなんて、一瞬、優越感に浸る。一番見晴らしのいい場所に腰をかけ、残りのサンドイッチを食べる。朝7時。途中、雨が降るかと思ったが、全く台風の気配はない。特に何も考えず人ひとり分くらい間を空けて座っていたが、もう少し近寄るように合図され、内心、そっちが来いよと思いながら、右側へ位置をずらして座り直す。特に抵抗することもないという感じで身を任せる。まだ全然早朝で、結構時間がある。映画1本観れるじゃん、とか言っていたが、映画館を探すのも面倒臭いし、今どんなのをやっているのかも知らないし、とりあえず雨が降ってきたので車に避難。

12時 大阪

Ordinary Fits、ここは夏に奈良のセレクトショップで見つけたデニムジャケットがかっこよくて、気になっていた。京都と大阪に店舗があるが、大阪のお店の方が車を停めやすそう、ということで大阪へ。開店までまだまだ時間があるので、とりあえず大阪を車でぐるっとする。東大阪のあたりは工場が多い。大阪城初めて見た。梅田、難波など。8割無計画旅だったが、運転手は、Googleマップ片手にハンドルを握り、行く先々で通りかかる建物や場所についてのガイドを兼任していた。おかげで、きっと一人で来たら見逃してしまうであろうたくさんのものが視界に捉えられた。都会を車で走りながらじっくり眺めるのは初めてかもしれない。とても気分がいい。さっきの優越感と似ているかも。たこ焼きを食べよう、ということになり、まあどこ行ってもおいしいやろ、と言いつつ、Googleマップの言う通り行ってみた1軒目は休み、残念。めちゃ低いガード(?)をくぐり抜け、西成の異様な空気に少し興奮を覚えながら、通天閣がどーんと見える商店街に着く。看板が派手。なんとか車を停められそうなスペースに落ち着く。どうやら運転手は、大阪ならその辺に車を停めても怒られなさそう、という認識らしい。私が車を降りて、パッと買ってくることに。たこ焼き屋は、手前ともう少し行った先にあったが、「たこ焼き一皿(8個)400円」のみを売る手前の店で買った。通天閣のふもとで、我々が今たこ焼きを食べるために停めている車の佇まいもたぶん派手というか、東京から来ました感出すぎて、あーこれなんていうんだ、”ええかっこしぃ”に見られてるんじゃないかという気まずさがあったけれど、とにかくたこ焼きはおいしかった。
中之島造幣局脇の川沿い、新大阪を経由して、いい感じに開店時間になったので、目当ての服屋へ。緑がかったグレーっぽい色のシャツを買った。襟がちょっと丸い。店員さんと、東京から車で来たこと、帰り台風気をつけて、などを話してまた車で出発する。LIFE歌島店(向かいが「コロナ株式会社」だった)に寄りつつ、尼崎〜神戸へ。

15時 神戸

なんとなく、小学生の頃に家族で訪れた神戸の印象が残っていて、異人館のあたりを車で通り過ぎてみたが、あっという間だった。そういえば、あの時も大したものはなかった気がする。なんとなくハーバーランドへ。
中学の修学旅行で京都に行った話になった。運転手は当時、京都新聞が欲しかったらしい。
南京町に入り、ぐるっと見た後、ぎょうざ苑で餃子を食べる。ミソのタレがよかったらしい(覚えてない)。
この日は泊まる宿を決めていなかったが、有馬温泉に行きたいという提案で、宿を検索する。自分ひとりのときは、たいてい一番安いビジネスホテルを探すのだけれど、良さげな旅館を見つけてすぐ予約もできそう、ということで一任することにした。

17時 有馬

The Rutlesを聴く。本家よりパロディーの方が詳しい。
お酒でも買って行くか、ということで、セブンに寄る。いつもウイスキーか焼酎を飲む(というかそんなに強いわけではないので舐めるしかない)のが定番なので、普段飲んでないのがいいな、と迷ったのち、赤ワインに決まった。
「古都里」チェックイン。なんかたぶんずっと機嫌が良くて、とりあえず全部褒めたいモードになっていたので、入った瞬間、いい匂いがする〜と言ったことは覚えている。どんな匂いだったかは全然記憶にない。フロントで、夕飯は18時か19時どちらにするか聞かれ、向かい合って目が合い19時で、と即答した。朝食は7時半か8時半、今度は首を傾げてこちらに視線を向けたので、起きられる訳ないよな、と悟った私は8時半と即答した。
台風はちょうど今夜、近畿地方を通過して、明日には過ぎ去ってしまうみたいだ。
夕食を食べてからお風呂に入ることにして、19時まで夕寝。
当日予約でこんな贅沢な時間を過ごせるとは思ってもみなかった。あなたは日頃の行いがいいんだろうね、と言われた。こういう根拠のない不意打ちで、いつも満たしてもらっているのかもしれない。三田米が美味しかったらしい(たくさん食べていた気がする)。
露天風呂、壁と屋根の間からは、たまに雨粒混じりの強風が吹き込んできて、火照った身体には心地よかった。外に背を向けて座っていた私と向き合う人に、屋根から滴り落ちていく幾筋もの水滴が綺麗だと教えてもらう。
一日が充実しすぎて、3日経ったかと思った。

20日(火)

朝8時半の朝食に間に合うように、7時半のアラームで起きる。いい布団といい枕だったおかげで熟睡できて、疲れがスッキリ取れていた。朝食は昨晩と同様、とても豪華で、前菜のニンジンとオレンジのジュースも、豆腐も野菜もきのこもご飯も全部やさしい味付けで美味しかった。
露天風呂がある方の戸を開けると、秋らしくひんやりとした風が気持ちよかった。足だけ浸かりながら、歯磨きをする。

10時 玩具博物館

台風一過という感じで、すっかり清々しい秋の風が吹いていた。車に荷物を積み込んだけれど、ちょっと歩いてみようかとなって、有馬の温泉街を散歩した。坂が多い小さい道に、古くて小さい建物が所狭しと並んでいる。観光地なので、人が多いときは道いっぱいにぎゅうぎゅう詰で歩く感じになるみたいだけれど、平日の朝なので、ゆっくりいろいろ眺めながら歩くことができた。途中で、玩具博物館があったので、入ってみることにした。

都会を離れて、涼しい風が吹いて、穏やかな昼下がりにぴったりなのでは、と思って奇妙礼太郎のカバーを聴く。一般道で淡河を経由しながら明石へ。大蔵海岸から明石海峡大橋を眺める。

14時 明石

魚の棚へ。玉子焼き(明石焼き)と串かつ。串かつはいろいろ種類があって、なんかサービスしてもらった気がする。昨日食べたこってりソースのたこ焼きとはまた違う、上品な味がした。子午線を見る。水色のランドセルの小学生。

16時 淡路島

でかい観覧車があるサービスエリアで、お土産を買う。入り口にオニオンスープの看板を見つけて、迷ったが、アイスを食べた。私はコーヒー牛乳。一口もらったミルクソフトの方が真っ白い甘さがあった。イートインスペースにペイントが施されたグランドピアノが置いてあった。ピアニストのコンサートのチラシかと思っていたら、そのペイントをしたアーティストの紹介だった。プロフィールに「世界を拠点に活動し、日本での可能性が0になるまで〜」なんとかかんとか書いていて、日本語がよくわからないなと思ったのだが、現実に戻った今でもよくわからない。

17時 こぞら荘「森の宿」

こぞら荘を目指して山を上る途中、「ヤギは見世物ではありません」という看板が立っていた。インスタ掲載料50,000円らしいです。
チェックイン前に、こぞら荘の雑貨屋でレターセットを買った。ミモザ
ここの宿は1日3組限定で、1部屋は離れになっている。「木漏れ日」という名前の部屋、というか小さい家。車を降りて、階段を上り、ドアを開けて入った瞬間、インスタ映えだ〜とつい声が出た。アメリカに似ているらしい。2階に上がると、湊かなえの「母性」「望郷」「告白」が本棚に置いてあった。なぜこの3冊が置かれているのかについて、二人で推理し始めた。「望郷」はたぶんこの島が舞台になっているから。「母性」は最近映画化されたから。「告白」はまあ、一番有名だからじゃない?安直すぎないか。天窓には、雲が流れるのが見える。
そういえば、こぞら荘に着いたとき、私と同世代の人たちがみんな、足元に広がる緑の風景にスマホを向けていて、ここだけ人種が違う、と思ったと言っていた。
夕飯は19時くらいにしよう、ということになった。おすすめのごはんやさんリストから、洋食もいいな、というのと、私はなんとなくピザを食べたい気分だったので、Raboというピザ屋さんにする。あと1時間ちょっとあったので、寝室のある2階で過ごした。ベッドからテーブルに向かおうとすると、いきなり段差があって、これ寝起きに絶対コケそう〜と思った。気をつけよ。
ピザ屋。天井に残っている梁の渋さと、ワインやグラスが並んでいる洒落た雰囲気と、その中でなぜか流れているバラエティ番組。関西のお店はどこでもテレビついてるよね。
店を出て、車で宿に戻る途中、星がたくさん綺麗だったので、少し海辺に寄り道して、車の天井を開けて、シートを倒してしばらく眺めた。高校の時、天文科学部だったらしい。山の上に行くほど、くっきり見える星の数が増えていった。
宿に帰ってきて、お風呂に入って、昨日買ったワインを飲んだ。ちっさい木のまな板みたいなやつ(名前なんて言うんだ)に、コンビニのアーモンドとチーズを並べたらいい感じになるでしょみたいなノリでそれもつまむ。
サイドテーブルを挟んで向こう側のベッドに横たわる人は、5分もしないうちに寝息を立て始めてしまった。あまりにあっさり眠ってしまったので、こっちは全然眠れなかった。あっさり布団に入ってしまったのは私の方だったか。窓から、ちょうど私の枕元に朝日が差し込む。

21日(水)

8時 朝

起床。早速、段差をすっ飛ばしてしまった。かかとが痛い。朝食は、冷蔵庫に材料が用意されていて、自分たちで作るようになっていた。サラダ、ソーセージ、卵。私は目玉焼きにした。朝食の後、私が身支度をしている間に、運転手は今日-深夜に向けて少しでも眠っておくことにする。朝食の食器や調理器具を洗って片付けてチェックアウトしよ〜完璧じゃん〜と思っていたが、結局バタバタしてしまい、そんなのは夢のまた夢であった。昨日の雑貨屋の隣でマフィンを買う。開店前から人が並んでいた。宿泊客は優先的に開店前に買うことができたが、ギリギリ間に合った。何個か買って、緑を見下ろせるベンチに座ってひとつずつ食べた。車に乗り込み山を下りる。朝食のパンを食べている時点で満腹を超えていたのだけれど、寝不足のせいなのか、コーヒーを飲んだからなのか、初っ端のうねり道で酔ってしまった。酔い止めを飲んでしばらくすると、全身の緊張が解けてふにゃんふにゃんな感じになった。室津PAでゆっくり海など見る。

京都

青空が綺麗だった。京都なのでくるりでも流しておくか。特に行く当てもなかったので、京都南ICから鴨川沿いを走り、結局こっちのOrdinary Fitsの店舗にも寄ることにした。私は昨日シャツを買っちゃったし、同じ店だし、わざわざ行かなくてもいいと思っていたのだけど、「じゃあもし買ってあげるって言ったら?」と言われたので、行ってあげることにした。黒のシンプルなベルトを買ってもらって、デニムのパンツは自分で買おうと思ったら手持ちが足りなかったので、両方とも払ってもらった。(帰ってからデニム代を封筒に入れて返したら、3ヶ月くらいデスクに無防備に置きっぱなしにされていた)
知恩院南禅寺を見つつ、おいしいたこ焼き屋がある、というので、軽い昼食をとることにした。不在着信が入っていたので、折り返してみると、今朝チェックアウトした宿からの電話だった。水筒を忘れていたらしい。
15時過ぎ、宝ヶ池の芝生にレジャーシートを敷いて、「すゞや」で買ったたこ焼きとしぐれ焼き(ミニお好み焼き)と、今朝買ったマフィンを食べる。雲が完全に秋、日差しもやわらかい暖かさを持ち始めていた。

そろそろ東京に向かうことにする。再び川沿いを進んで山科経由で高速に乗る。左手に見えるのは京大らしい。特に仲が良かったわけではないが同級生の何人かを思い出す。

どっかのサービスエリア(大津SA)

琵琶湖は想像以上にでかいということを知った。
車に乗り込み、駐車場を出るときに、手書きの文字で「福井」と書かれた紙を両手で掲げている男女が見えた。こういうの本当にいるんだね、と言われて、たしかに、実際に見たの初めてかも、と思った。Mr.Childrenの曲で、ヒッチハイクの歌があったような。タイトルが思い出せなかったけれど、Apple Musicであれこれ漁ってみたら見つけられた。ここからずっとミスチルを流していた。

浜松PA

トイレを出て、ベンチに腰掛ける。無事故で帰してもらわないと困る、という一心で、運転お疲れさまありがとう、と指先に軽く力を込めながら、とにかくスッキリするまで眠ってもらうことにした。生まれたての弟を寝かしつけていた頃の感覚を思い出して、この手で眠りにつかせる達成感を味わうために、静かに、優しく、長く、を繰り返しながら触れた。もっと遠くにいて大きいのかと思い込んでいたけれど、私の膝の上に横たわるのを掌で包んで撫でているうちに、意外と小さい、と思った。これが母性みたいなことか〜と思いながら、自分より強いものをてなずけているような充足感を覚えた。あとで、当の本人は、屈辱感がある、でもそれがいい、と言っていた。

海老名SA

2階でゆず塩ラーメン

遠征の帰りなのであろう運動部の高校生たちがフードコートにたくさんいて、ちょっとにぎやかだった。

22日(木)

0時半くらい 東京

引き続き、Mr.Childrenを聴きながら帰る。完全に自分の趣味に他ならないので、あまり人に無理におすすめしたり、自分が聴きたいだけのために勝手に流したりすると、相手が冷めてしまうのでは、と思っていたのだけど、ミスチルは夜の東京に合う、ということがわかったし、だいたい同意してくれたので安心した。で、自分のオタク素質を自覚した。
東京の橋も綺麗だなあ、と運転席で呟く。助手席で相槌を打つ。「東京 世田谷」の文字を見て、スカイツリーが近づいてきて、ついにいつもの通学路にさしかかって、一気に名残惜しくなってきた。このままひとり自室に帰っても、きっと眠れなさそうだし、明日もだらだら無駄に過ごすのだろうというような気がしたので、部屋に上がり込ませてもらう。ウェルシアで買っていった半額のピスタチオのチョコレートが終始美味しかった。

P.S.

ロイヤルミルクティーの淹れ方

1. 入れて ティーバッグ・水・牛乳を入れたらラップする。

2. チン♪して レンジ(600W)で2分チン♪そのまま1分待つ。

3. できあがり! ティーバッグを取り出してラニュー糖などお好みで♪

レンジでチン♪ 濃厚ロイヤルミルクティー|Lipton(リプトン) | Lipton JP