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手紙24

今日はなに書こうかな。今、朝井リョウの『正欲』を読んでます。やっと。半年前に発売されてすぐ買って読もうとしたら、一行一行が大事すぎていちいち感動して全然読めなかった。本はちょっと寝かせて発酵させた方がいい。昨日は大街道の喫茶店に4時間篭って半分読んだ。こんなに読んだのにまだ半分も残ってて嬉しい。茶碗に入った抹茶オーレの横に小豆(つぶあん)を添えて出されるような店で、800円のベリベリーパフェを一緒に頼んだ。小豆は抹茶の中に入れるのかなと思ったけど、小豆と抹茶オーレを交互に口に運んだ。疲れている時の食欲に対する判断力を全然信用できない。パフェは上半分を食べて下半分のアイスを溶かして返した。

  

 多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突きつけられる言葉のはずだ。時に吐き気を催し、時に目を瞑りたくなるほど、自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。(p.188)

矛盾し合うたくさんの価値観が互いに主張する「正しさ」が、文字を目で追う自分の中でガツンとぶつかり合うのが分かる。正論を言える人間になりたいと思い続けて生きているけれど、ただ一つの正しさなんて存在しないのかもしれない。正論を言う人間に幻想を抱いていたのも、自分とは違う「正しさ」を主張する人の理不尽さに苛立ち、自分と同じ「正しさ」を説く人に救われたような安心感を抱いたことがあるというだけのことかもしれない。みんな自分が正しいと信じながら生きたいと思っている。

朝井さんが朝井さんの正論で何かに蓋をするのではなく、異なる「正しさ」、しかも矛盾してしまうようなそれらを並列している。映画やドラマや、もちろん本でも、SNSでも、とにかく共感できるか否かというものさしで価値が決められるこの世で、全然共感できないどころか存在すら知らなかったようなものがどんどん飛び込んできて、まさに自分の想像力の限界を突きつけられる。何もかも否定できなくなる。

まだ、あと146ページ残っているのでこの辺で。