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晴れた春の日

ふくらはぎの痛みと尿意で目が覚める。さすがに歩きすぎたな。トイレに行く。6時間は寝ただろうか。時計を見る。1時。まだ3時間しか寝てないけど、6時間ぐらいぐっすり寝たようなからだの軽さがある。

横になる。ひとまず、下に溜まっている血液と水分をじゅんかんさせようと、毛布のかたまりをひざの下にしいてみたが、やわらかすぎて、全然高さが足りない。あっためた方がいいんだっけ、いや冷やした方がいい?夢を見ていた、そういえば。ふくらはぎがやはり痛くて話にならない。目が覚める前、夢を見ていた。だけど、もっと長かった気がする。あれは夢?

 

言われた通り、JRの都区内パス常磐線に乗って来た私は、彼のそうさするスマホを一緒にのぞき込んでいた。カメラが全くこわれているらしい。私が昨日か一昨日、ゆっくり行くことについて書いていたにも関わらず、だからなのか、ゆっくり歩こう、東京の人は歩くのが早い、と言われた。すごくゆっくり歩幅を合わせて歩いてみた。私は東京の人ではないし、東京の人ではある。ゆっくり歩きたい人は東京の人だし、どこの人でもないかも。

 

上野で現代アートをみました。黒いカーテンの部屋の前の「刺激の強い表現が含まれます」という注意書きと、そのタイトルから、私は大体想像がついたので、今回はいいかと思って入らないでいたら、何も知らない、強い刺激に耐性のなさそうな人は「こっちも見る?」と黒いカーテンを開けたので、あ、いいんだと思った私は慣れた足取りでクッションに腰掛けて映像を観ました。案の定、入り口のそばに立って様子を伺っていた人は、5分も経たないうちに部屋を出て行きました。

この日は本当に天気が良かったので、日暮里に向かって歩きました。私の方向音痴をネタにされながら谷中霊園の迷路を出て、でかい大仏のいるお寺が見えたので、入ってみました。入学式だったのか、正装の親子が満開のしだれ桜の下で写真を撮ったりしていました。セイコウウドクって言葉いいよねーと言われて、しばらく何のことかわからず、セイコウウドク?と復唱していました。晴れた日は畑仕事をして、雨の日は家で本読むってことでしょ、俺の認識が合ってれば。それはもちろん同感です。

新宿に着きました。伊勢丹を目指して果てしなく続く地下道を歩きます。もう5年ぐらい私の方向音痴を揶揄っている人が、「地下にもぐった途端に方向感覚がなくなるんだよなぁ」と呟いたので、電波が入ってこなくなるんですか?笑、と言っておいた。GPSか。

お昼ご飯の時間です。さすが新宿、トーキョーって感じのおしゃれなお店がたくさん並んでいて、迷います。私は内心、ベトナム料理がちょっと気になっていましたが、お茶漬け屋さんの写真を指差して、いいなぁ、と言った人について行きました。8階に着くと、土曜のお昼時です、結構混んでいました。入れそうな店がパスタ屋さんぐらいしかないじゃん、と思いきや、宇治抹茶のお店に、抹茶を使ったお茶漬けがあることに気づきました。お茶漬けかパスタ、どっちがいいですか?と尋ねると、もう一回あっち見てきていい?と言われたので、私は「いいですよ」と返すつもりが「いいよ」と言ってしまい、しかし周りが騒がしいので聞こえてないだろうと思って冗談を言う隙もなく、いいよtっいいですよ、と言い直しました。鮭茶漬けを頼みました。抹茶の鮭茶漬け、さわやかでなんとも不思議な味です。

そうそう、Suicaのペンギンが好きだという人の提案で、坂崎千春の展覧会に行くことになっていました。ペンギンとねこ、かわいかったです。

これは、東京の人としての意志が相当固くないとできないことだと思いますが、エスカレーターで上に向かっているとき、「右側誰も歩いてないと、なんか空いてるの気になるんだよなぁ」と言って、私の右側に立ちました。私も常々、右側を掴んで立ち止まってやりたいと思っているけれど、その勇気がないので、東京のエスカレーターは左側にしか立ったことがありません。

原宿を歩きました。何をしに行ったのか思い出せませんが、帰り際にカフェに寄りました。最近、カフェインを摂ると動悸がしてだめな私は、桜ほうじ茶ラテを頼みました。最近コーヒーをよく飲むようになったらしい人は、原宿ブレンドを頼んでいました。とてもおいしかった。器も素敵で。黄色い天井を見上げると、桜の木が描かれていました。

 

原宿から品川、東京へと一駅ずつ通過していくにつれ、小樽から札幌に戻っているときのあの感じが蘇ってきた。車窓から夕日が見えたので、私は、夕日がきれいですね〜と言った。ね、俺はお寺で見た しだれ桜が一番きれいだったなぁ、と言っていた。おいしいとか、きれいだとか、素直に言葉が出てくる自分がいることに安心する、そんな一日。