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みんなアーティストになればいいのに

と、思ってアートプロジェクトをやっているところがあるかも。自分が何かを考えたり作ったり企画したりするとき、「それを生み出したのはアーティストである私で、唯一の存在です」というのを証明するものであるべきとは思っていません。私もあなたもあの人も一緒に、作り手であること、を目指しています。時間もお金もごはんも睡眠も惜しまないアーティストが人生をかけて生み出した、ハイクオリティで完璧な作品もありがたく享受したいけれど、ふと思いついたらいつでも形にしちゃう人たちがたくさんあふれていたほうが、もっと日常的におもしろいものに触れられる世界になるんじゃないかと思う。体裁が整っていることよりも、もっと重要なことをそれぞれが抱えているはずで、私はいろんな人のそれを見たいので。でも、ほとんどの大人は、あまりしょうもないことをする暇などないし、思いついても形にしようとまでは思わない。そういう世界なので、私は、いろんな人の内側にある「重要ななんか(=私がおもしろがるもの)」をつついて、とりあえず外側に出して、私や他の人がそれを目の当たりにできる仕掛けや場やルールなどを考える人になろうとしているんだと思います。

中身も外見も、足りないところ、至らぬところが多々あるかと思います。けれど、このくらいで十分だと感じる自分もいます。私たちは頂上や完璧を目指すことを少しお休みしていて、わずか先を見ることさえ億劫になり始めています。でも、今この瞬間この場所だけでは苦しくもある。だから、「20年かけて『ハムレット』を上演します!」などと曖昧なことを言い出したのだと思います。ハムレットと一緒にいれば、ここにいてもどこか遠くへ行けるだろうし、不完全は完全にまさるかもしれない。

中野成樹+フランケンズ2022『EP1(ゆめみたい)』パンフレットより引用